廃刊になったオートバイ雑誌、『ミスター・バイク Mr.Bike』。発行所・㈱モーターマガジン社。ちょっとバイク雑誌の域をはみ出し過ぎた雑誌だった。というよりバイクとは無縁の人、物が表紙の写真になることのある奇妙な雑誌。それは、それで面白かった…。 傾奇者(かぶきもの)とは、「並外れて華美な風体をしたり、異様な言動をしたりする者。だて者」。
1992年の2月号の表紙は、なんと海老一 染之助・染太郎(えびいち そめのすけ・そめたろう)。バイクに何の関係があるのだろう?。2人は実の兄弟で、伝統演芸太神楽のコンビ。兄弟の芸、言っては失礼だが、もとい、書いては失礼だが、ワンパターンの芸風。ただ、日本傘の上部で色々なものを回すだけの芸。あなどってはいけないのが、その芸を行い「おめでとうございます!」と言うと、本当にお目出度く思えたのが凄い。これが、芸能というものだという感じ。1991年1月号、ビートたけしこと北野武の表紙。1993年七月号、松村邦洋、同9月号は、ダチョウ俱楽部が飾っている。1980年代、バイク雑誌は十数種類あったと思われるが、その中でも`アウトロー´を最も意識した雑誌が「ミスター・バイク」だった。バイクに乗る奴はアウトローとのイメージ。それを雑誌にしたのが「ミスター・バイク」。雑誌を手にしてから40数年、今、読み返してもそう思える。記事の内容がアヴァンギャルド、前衛的、先鋭的、破滅的、場当たり的、大衆迎合的。一応、ほめていうと「流行を捉えた…」とでもいう内容。紙面を作ってる編集者でも「紙面の9割は広告、記事は1割」との自虐的説明があったが、その通りだった。まあ、そこが`アウトロー´。企画で一番、ぶっ飛んだのが、「キャノンボール・ラン」だったかな?…という企画(注)。皇居から北海道宗谷岬までバイクで走り、一番乗りを競う競技??。走り方は自由。勿論、道交法などは守って走る…奴らは居なかったような気がした。確か、一回目は八台が参加、ゼット乗りが一番に到着したような記憶がある。三年ほど続いてその筋に睨まれて企画は休止したと思う。
企画は他の正当なバイク雑誌とは一線を画すどころか、二線、三線も離れた`弾けた´雑誌。オンリーワン、唯一無二の雑誌であって欲しいので復活は望まない。有名人、著名人だけでなく言っては悪いが有象無象の無名の人たちが本音で書いていた毎号載せられる『コラム』欄は、最高に面白かった。その面白さは、最終号まで続いた。僕もそうだが、取るに足りない人間の方は本音を語る。「ミスター・バイク」、あくまでレジェンドとしてーー今、流行りの意味でなく、軽くなくーー真の意味の伝説として「あの頃、弾けた雑誌があった」と懐かしく伝えられて欲しい。
すいません。最終号に掲載されたこれまで発行された表紙の写真をじっくり見たら「ちょっと」でなく「かなり」の傾奇者(かぶきもの)でした。
(注)このレース?の原型は、『激走!5000キロ』(げきそう ごせんきろ、原題: THE GUMBALL RALLY)だと思う。ウィキペディア(Wikipedia)によると『激走!5000キロ』(げきそう ごせんきろ、原題: THE GUMBALL RALLY)は、1976年制作のニューヨークからカリフォルニア・ロングビーチまでの大陸横断公道レースを描くアメリカ合衆国のカーアクション映画。チャック・ベイル監督。
出場マシンは、コブラ427(バノン/グレーブス)V型8気筒6997cc、425馬力、最高速度257.6km/h
- フェラーリ・365GTS/4デイトナスパイダー(スミス/フランコ)V型12気筒4390cc、352馬力、最高速度280km/h
- シボレー・カマロZ28(プレストン/ギブソン)V型8気筒6490cc(それ以上?)600馬力
- ポルシェ・911タルガ(アリス/ジェーン)水平対向6気筒2341㏄
- メルセデス・ベンツ・300SLロードスター(バーニー/アンディ)直列6気筒2996cc、215馬力、最高速度225km/h
- ダッジ・ポラーラパトカー仕様(カンディンスキー/アビア)
- シボレー・バン(ジョー/ハリー/メル)
- ロールス・ロイス・シルヴァーシャドウ(ホセ/アンジー)V型8気筒6750cc、馬力・スピードとも「必要にして十分なだけ」と伝統的に公表せず。
- シボレー・コルベットスティングレイ V型8気筒7440cc、460馬力、最高速度210km/h
- ジャガー・Eタイプ
- カワサキ・KH400(ラプチック)並列3気筒400cc、38馬力、最高速度165km/h
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