カワサキ Z900RS SE Yellowball イエローボール(綽名:ラッキーボール Luckyball)に跨り、スタータボタンを押しエンジンを始動。しばしアイドリング。水温計の目盛りが一つ点灯。クラッチを左手で握り左足でギアを下ろし、一速に入れ発進。一路、野田村の「苫屋(とまや)」という茅葺(かやぶき)の宿を目指し三陸縦貫道の釜石インターチェンジを駆け上る。一路、北へ。快晴。野田インターチェンジで自動車道を降りる。降りてすぐに交差する県道29号線を左折。4㌔走り脇道を左に入って3㌔ほど走ると目的地にたどり着く。県道29号線(野田山形線・けんどう29ごう のだやまがたせん)は、岩手県九戸郡野田村から久慈市山形町に至る、総延長距離42㌔ほどの県道。
着いたら丁度、民宿の主が布団を干しているところだった。布団を叩きながら「いらっしゃい」と窓辺から声をかけてくれた。お陰で、気軽に店に入る事が出来た。「苫屋」は、築160年以上の南部曲り家を改築した民宿兼喫茶店。夫婦二人で営む小さなお宿。宿泊部屋数は2部屋だけ。この場所、最近、やっと携帯の不感地帯、圏外から抜け出た。が、宿には電話は無く、店の主夫婦は、携帯電話は不携帯。宿泊の予約は、①往復葉書(ハガキ)か②直接訪ねて申し込む、の2つの方法しかない。喫茶店の方は、予約なしで入ることができる。喫茶店での食事のお品書きはランチ一種類のみ。初めから書いておくが、日替わりランチの量は少ない。小学生高学年でも少ないと感じるほど。で、味付けも薄いと思った方がいい。食事の素材は、耕(たが)さない畑で育てた野菜および野田村の獣の肉、魚。味付けは「野田の塩」かな?…などを使っているので化学肥料、添加物などの心配はない様子。サラダのドレッシングは自家製マヨネーズ。もちろん、味は薄い。肉にタップリ塩、コショウ、焼肉のタレをつけて食べる方、魚にドバドバと醤油をかける人には向かない料理。ラーメンにはチャーハン、ソバにはカツ丼(親子丼)が必須と考え、定食のご飯は大盛りだ!という方にもおススメ出来ない。健康志向の高い方、減量を目指している方、小食の方には向いている。
築160年の古民家というのでお風呂は、五右衛門風呂かなと期待したが普通のお風呂。拍子抜けした。五十年ほど昔、僕の父の実家は五右衛門風呂で、カマドの上に人が入れるほどの鋳鉄製釜をのせ水を張り、カマドで木材を燃やし湯を沸かした。釜の上には蓋の桶。湯が沸き直に湯舟(釜)に入ると底が熱い。それですのこ板を足の下に置き、踏んで入った。木は浮力があるので沈めたすのこ板は浮き上がる。子供の体重は軽く、湯につかりながらすのこ板が上がってこない位置を足を使って維持するのに苦戦。位置がずれると板が外れ、足が釜の底に着く。熱い。絶えずすのこ板に体重をかけバランスをとらないといけないのでゆっくり入浴という訳にはいかなかった。忙しかった記憶がある。しかも、母屋から離れた別棟に風呂があり、裸電球が一個あったが、夜、周囲は真っ暗。お化けでも出て来やしないかとヒヤヒヤものだった。そして、トイレ。「ひょっとして汲み取り式の和式便所かな?。しかも別棟かも」と妙な期待。俗に言う「ボッチャン・トイレ」かと思ったらこれまた普通のトイレ。和式と洋式があり男性専用の便器もちゃんとある。「ああ、普通のトイレですね」と言ったら「お客さんからは、オシュレットは付いていないのですか?」とよくたずねられると主が言う。風呂場、トイレが現代的でよかった。
12/1 追加 苫屋店主から「瓦葺(かわらぶき)ではなく、茅葺(かやぶき)です」とご指摘を受けました。訂正しました。
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